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ワイン発祥の地と言われているジョージアは8,000年前からワイン造りをしてきたと考えられています。その長すぎる歴史故なのか古い伝統や格式、固定概念がワイン造りの世界に根強く残っているようです。ワイン造りは男の仕事。女性は食事の支度や家事をするものと考えられ、現代まで女性がワインを造ることはなかったそうです。
 今回ここでは、ケテヴァン・ニニッゼ(通称Keto/ケイト)というジョージアでの女性生産者のパイオニアともいえる生産者をご紹介いたします。長い
伝統と固有のワイン産業に強烈な楔を打ち込んだ女性であり、個性豊かなナチュラル・ジョージアワインはボトル内の液体から外観のラベルに至るまで非常に魅力に溢れており、経歴やフィロソフィーやその他に取り組む様々な活動も輝き続けています。

 首都トビリシ出身の彼女は、トビリシ州立大学で言語学を専攻し卒業後は長らくジョージア文学や文献に関わる研究員、ライター、文芸批評
家、ジャーナリストとして従事し主に文章の世界に身をおいてきました。
彼女の夫は、ジョージア西部サメグレロ地方(※)でワインを造るVinoMartvillei(ヴィノ・マルトヴィレ)のZaza Gagua(ザザ・ガグア)です。夫ZazaはSamegrelo(サメグレロ)地方の自然保護活動にも長らく従事しており、彼が行政からマルトヴィリの自然保護活動の仕事も正式に請け負う事になった2016年に、ケイトはまだトビリシを拠点としてライターやジャーナリストの仕事をしていましたが、トビリシを完全に引き払い、以後Samegrelo/Martvili(マルトヴィリ)を生活・仕事両方の拠点としました。彼らはZazaの曽祖父が住んだとされる1933年に建てられたOdaと呼ばれるMegrelia(メグレリア/かつてジョージア西部のこの辺りはこう呼ばれた)伝統住居で生活とワイン造りを始めます。
「ずっとここに住みたかったの、子供たちも自然のすぐそばで育てたかったし」と彼女は笑います。


 Ketoが完全にトビリシを引き払う以前の2012年から、夫Zazaはこの地で自らのワイン造りを始めました。Odaと呼ばれる住居兼ワイナリーがあるその敷地内には綺麗な小川が流れていて敷地はかなり広いです。90年代はヘーゼルナッツの樹が植えられていた場所はKetoとZazaによって2016年に早速ブドウ樹に植えかえられました。「近所の人々から奇異の目で見られていたわ。」と彼女は笑って思いだします。
 Ketoは元々ワイン造りを志すつもりはありませんでしたが、Zazaが自らのワイナリーを立ち上げた頃からワイン造りに興味を持ち始めたそうです。 同時に女性である自分は、ジョージアの古い伝統や風習を考えるにその神聖な領域に踏み込めない、踏み込んだとしても周囲から正当性や理解を得られないだろうとも感じていたといいます。
 文芸批評と執筆活動を10年続けたちょうどその頃、ジョージアワインクラブ(※)からジョージアワイン造りの記事執筆の依頼が飛び込んできました。
もちろん非常に興味をそそられたそうです。結果、相当な熱意とエネルギーをその執筆活動に注ぎ込み、書き終えた後には彼女は自らのワインを造る決心をしたそうです。
(※ロンドンに拠点をおく英国のジョージアワインインポーター)

 Martovili(マルトヴィリ)に住み始めてから、Zazaから彼女に提案がありました。
 「素晴らしいオジャレシを造る地元のブドウ農家からブドウを買って自分のワインを造ってみたら?(もちろん無農薬、ビオであることは言うまでもありません)」。
 ジョージアワインクラブへの寄稿以後、執筆活動と並行してZazaやナチュラルワインを造る多くの友達から剪定や収穫などの畑仕事と醸造を学んではいましたが、ワイン造りの経験は一切なかったKeto。しかし、もちろん答えは二つ返事でYES!わずか500kgのオジャレシをつかって300Lのステンレスタンク1本で初めての醸造に挑戦しました。しかもジョージアの伝統製法など意に介せず一切醸しなしの醸造を実践。周りの生産者仲間は、醸しは醸造中にワインを守る作用・効果もあることをよく知っているので、「リスクが高すぎる、Crazyだ!」と大反対したそうです。しかし、数ヶ月後に出来上がったそのフルーティーな特徴に彼女は満足したといいます。
 今もジョージアの他の多くのワイナリーや夫Zazaと違って、彼女はスキンコンタクトを通じたアンバーワインを造るのではなく、醸しなしの純粋な白ワイ
ンや土着の黒ブドウを使ったロゼや赤ワイン造りにフォーカスしています。

ジョージア西部サメグレロ地方、土着品種でのナチュラルワイン 二人が住みワイン造りを行うジョージア西部サメグレロ地方は、かつては偉大な伝統的ワイン産地だったそうですが、フィロキセラが蔓延した19世紀以降は忘れ去られた産地となりはててしまいました。さらに続くソビエト支配時代は産業復興のためにワイン造りは虐げられブドウ畑はその他の植物や産業にとってかえられ、その結果、55品種ものサメグレロ土着品種は姿を消したそうです。
 その土着品種の復活にひときわ情熱を注いでいるのが実はKetoなのです。
 彼女たちが2016年にOdaの敷地内に植えたブドウはもちろん土着品種のOjaleshi(オジャレシ)、そして現地でもさらに忘れ去られているTchvitiluri(チュヴィティルリ)です。今も彼女はOdaの建物正面の広い空き地にkoloshi, dudghushi, lakaiazh , ashugazhという品種を植えており数年後にもちろんそれらはワインとなる予定だそうです。非常に楽しみです。
 「私のワイナリーはSamegrelo地方土着品種の復興と普及に貢献するNew Wave,パイオニアワイナリーの一つよ」 これからまだ味わったことがない品種が日本に続々到着するかもしれませんね。

 ジョージアのような保守的でかつ家父長的な価値観が強く残る文化のもとで、家族生活とワイナリー経営を両立・実践していく事は非常に難しいトライでありそれは今後も続くであろうとKetoは深く悟っているようです。例えば、女性が造るワインは飲むに値しないという人もいれば、女性がワイナリー造りへの道へ進むことを厳しく制限する人もまだまだ数多くいるそうです。またそのエキゾチックな見た目を、夫や兄弟が造るワインの広告塔としてだけ利用されている現実も見てきています。こういった事例を一人の人間として目の当たりにして非常に驚いてショックを受けてきたといいます。
 ワイン造りの世界に飛び込み、その伝統の殻の中に閉じ込められていた風習に立ち向かってきましたが、それ以前から実は彼女はジャーナリストとしてジェンダーフリー問題や女性への家庭内暴力の問題を取り上げてきていました。彼女のワインのエチケットでも女性の魅力をそのままに表現しており、それはしばしばジョージア国内で論争の的になることもあるようです。

 ジャーナリストとしてのDNAは彼女の中に今も脈々と生きております。ワイン造りを通して、女性の職業や生き方の選択自由が全ての女性にとってあたり前となる未来、ジョージア国内の女性への暴力防止や地位向上を訴え続けています。共著作として2019年に出版された“GentlyFermenting Revolution: Women in the Georgian Wine Business ”という本の中でも彼女のその思いやフィロソフィーは綴られております。

 ジョージア国内での女性の現状、ワイン造りなどの古い伝統産業の中での女性のこれからの活動の在り方。女性がもつ魅力が古い伝統と現実を変えていくことができると信じ自らの活動で体現しているのがKetoであります。
 KetoとZazaが住むOdaにはこれまで2度訪問しましたが、ジョージアの他全ての生産者と同じく盛大な料理でもてなされました事は言うまでもありません。ジョージアの地ではワイナリー(Marani)に訪問すると盛大な食事の席が絶対に用意されています。一日に5食食べることもあります。全て地のもので、手作り、シンプルでとても美味しいのです。
 しかし、ほぼ全ての訪問先で出てくる料理はほとんど同じ料理なのです。そして種類が10種類近くはあり、しかも、、、4日~ 1週間滞在して毎日3~ 5食、全て同じ料理というのは。。。。大きな声では言えないのですが、やはり飽きます。やはり食欲はどんどん細くなってくるのです。つらくなってくる人もいました。
 ですが! Odaで頂いた食事は違います。無茶苦茶美味しいのです。ツアー中日での訪問でもかなり食べました。それはKetoとZazaがSamegrelo(サメグレロ)地方での自然ツアリズムのパイオニアでもある事、Ketoがこの地方の郷土料理のプロフェッショナルでもあるからです。彼らはガストロノミーとワイン、自然遺産を絡めたツアービジネスも細々と行っておりこれまでに数百のお客さんを自宅Odaでもてなしてきたそうです。Samegrelo(サメグレロ)の郷土料理について、彼女は地元の高齢の諸先輩に聞いたり古い文献をあさったりしてここでも土着の料理の復興に努めているのです。そのパワーにはもう脱帽するしかありません。
 「ワイン造りにおいては偉大なる自然の声を聴くこと以上に大事なことはない。自然と文化・産業はまったく別物であり自然に逆らえば必ず失敗する。しかし生活していくうえで文化や産業復興も重要であり、自然と文化・産業の関係を密接に協力できる構造を造っていく必要があると考えているの。バランスをとり両分野が継続して成長し得る絶妙なポイントを見つけることが重要だわ。」とKetoは言います。都会のトビリシで長年ライター、ジャーナリストとして国内の様々な問題を見てきた彼女、今はワイン造りを中心に多くの活動にも並行して力を注いでいます。
 様々な仕事にエネルギーを注ぐ彼女ですが、その源は一つ。愛すべきものを守り愛すべきものが愛されるため。そんな気がしています。
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